感情を言語化できない… 失感情症という性格特性を正しく知ろう

感情を言語化できない… 失感情症という性格特性を正しく知ろう

それは病気ではなく、1つの個性です。


失感情症という性格特性があることをご存じですか?


言葉の通り受け取ってしまうと、感情がなくなった、感情を感じないというようなイメージを持たれる方がいらっしゃると思います。

しかし、失感情症は“感情は確かにあるのだが、言葉にできない、伝えられない”という特性を持った性格という意味です。

(※感情鈍麻=アパシーと混同しないように注意してください。) 

失感情症とは

失感情症は、アレキシサイミアという言葉を日本語で直訳した言葉で、心身症の治療に取り組む精神科医のピーター・E・シフネオスらにより提唱された性格特性の1つです。


心身症とは、心の動きによって体も反応することを指します。

例えば、
緊張すると汗をかいたりドキドキしたり、好きな人と話すとき声が上ずったり、声のトーンが上ったり、怖いと思ったときに体が萎縮したりこわばったりといったように、

心の動きによって、体も同様の動きを取ることが分かっています。


シフネオスは、心がその人にとってマイナス方向に変化することよって体調も崩してしまうといった心身症の患者に向き合うなかで、

患者が自身の心の葛藤やストレス、不安などに対応しきれなくなってしまっている場合、その現実から逃げてしまう人が多いと気付きました。


その時同時に“自分の感情を言語化できない”という特徴を見つけ、それを失感情症という性格特性としたのです。

具体的にどんな状態なのか

失感情症という性格を具体的な例で挙げてみます。


<職場で仕事を失敗した時に上司や同僚から責められ、怒られた。>

このような場合「悔しい」「悲しい」「つらい」「見返したい」「ムカつく」といった感情が出てくると思います。


ですが、それをどんな気持ちか説明してくださいと言われると、

本当にその気持ちであっているのか、本当にその言葉であっているのか、ぴったりくる言葉、近い言葉が見つからなくなっていきます。

そうするうちに、本来湧いていた感情の認知さえ難しくなっていってしまうのです。


失感情症は何度も言うように、病気ではなく性格特性です。

そのため、失感情症という性格特性を全面に持っている場合よりも、ある特定の条件や環境、人といった要因から部分的に失感情症の傾向が強まる場合の方が多いと考えられます。

失感情症の特性が生まれる原因

遺伝的(先天性)に持つことが大きいと言われています。


しかし、その後の生活環境、職業環境、人間関係などによってその特性が強く出ることもあるようです。

一般的に、

・普段から何を考えているかわからないと言われる
・辛抱強かったり我慢強かったりする
・ポーカーフェイス
・人と話すことが苦手
・空気が読めないと言われる
・相手の気持ちを考えた行動を取れない

といった人がなりやすいと言われています。

私のカウンセリング相談者のなかには、以下のように仰る方がいました。

・国語の文章問題で登場人物の気持ちがさっぱりわからない、共感できない
・いい歌(歌詞)だと紹介されても、何も感じない
・泣ける映画や本、マンガを紹介されても泣いたことがない


このような人は失感情症の性格特性を他の人より持っている可能性が高いです。

失感情症が引き起こしやすい病気

間違いがないように何度も伝えますが、失感情症は病気ではなく性格特性です。

しかし、心身症と強く結びつく傾向があるのも事実です。

次のような病気を引き起こしたり併発する可能性があります。

・心身症
うつ病
・不安症
・依存症
・統合失調症

失感情症に悩んでいる方、どうしても克服したい方

前提として、性格特性の1つですので、失感情症の方が悪いということではありません。

しかし物心がついてからだったり、大人になってから後発的にその特性が強く出てしまうと、性格が変わった感じがしたり、戸惑ったり、違和感を持ち続けたり、そんな状況も想定できます。


そういった場合、最初は「感情」に対して向き合うことをおすすめします。

まずは、起こったことと感じたことをメモしてみたり、日記を書いてみたりするのも良いですね。

文字にすることで一定の言語化が進む可能性があります。


また、失感情症を受け入れるということも非常に重要になります。

たまたまこの記事を読んでいただいた方は、自分や知人、大事な人などのなかで失感情症の性格特性を持っている可能性があることを理解していただいたと思います。

そして、“感情が言語化できないことは、おかしいことではなくて個性である”と認識できるはずです。


どうしても生きづらさを感じてしまう場合は、特定の人に失感情症のことを打ち明けてみることを提案します。

例えば、この記事を教えて理解を促すところから始めても良いでしょう。
とにかく、今の自分の感情を理解し肯定することを心掛けてほしいと思います。

また、ストレスによる心のダメージも緩和した方が良いと考えます。

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最後に、失感情症のような性格特性が出ることによって悩まれる方、苦しむ方も多いと思います。
もし相談する人がいない、1人ではどうすることもできないという方がいらっしゃれば、FABO news.の運営するカウンセリングサービスがありますので、興味があればいつでもご相談ください。

この記事のライター

神奈川県生まれ。心理カウンセラー・キャリアコンサルトの有資格者。うつ病 / パニック障害 / 適応障害 / 依存症 / などの精神疾患から仕事や日常的な悩みなどを幅広くカウンセリング活動を行う。社会問題から心理学関連、カウンセラー活動記録、研修・教育、など人や仕事に関わるジャンルでライティングを行う。趣味は、アニメ鑑賞、競馬、散歩。採用コンサルタント、就業ケアマネージャーとしても活動。

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