精神疾患には多くの種類があります。
うつ病が最も有名だと思いますが、適応障害やパニック障害、心身症や強迫観念、PTSD、統合失調症などが挙げられます。
なかでも、うつ病患者またはうつ病の傾向が強い人、適応障害の人が最も多く存在すると考えています。
そういった心の病気に気づいている人から気づいていない人まで、潜在的に心の苦しみを持っている人という見方をすれば、すべての人間が何らかの心の苦しみを抱えていると思います。
人間である以上、1人1人が思考と感情を持つわけですから、他人同士が共存する“会社”や“学校”、“グループ”や“団体”の中で、思考や感情が異なることによって心の苦しみが生じるのは当然と言えます。
この記事では、先天的ではなく後天的に生まれてしまううつ病や適応障害について、“なぜ人は苦しむのか”という観点からその原因をお伝えします。
うつ病や適応障害になってしまう道筋
後天的に患ってしまううつ病や適応障害は、環境による影響で発生すると言えます。
会社や学校という不特定多数の人が集まる場所では、1人1人が「自分の思考や感情」を持っていて、心理的な距離感や接し方、自分の立ち位置などを探りながらコミュニティを形成していきます。
ここで想像していただきたいのは、ゼロから始まるコミュニティの場合と、すでに完成されたコミュニティの場合では、そこに参加する難しさは異なってくるということです。
例えば、学校のクラスというのはゼロから始まるコミュニティへの参加であり、会社に就職するというのは(ほぼ)完成されたコミュニティへの参加と言えます。
多くの若年層が最初に体験するもののなかで、卒業と入社というイベントがあります。
しかし日本では、新卒の退社率が高いという現象が長い間続いています。
早期退社が常に一定数あるということは、所属するコミュニティに適応することができない新卒が常に一定数存在するということと同義です。
仮に無理やり適応したとしても、心への負担は自分自身が思っているよりも強大なものであり、やがてうつ病や取り返しのつかない苦しみになっていくことは想像に難くないと思います。
それもそのはずで、自主的な社会参加経験やアルバイト経験が豊富だったりしない限り、日本の学校教育だと、高校卒業や大学卒業とともに初めて完成されたコミュニティに触れることになります。
これまで経験も教育も受けていない状態で、完成されたコミュニティに何の心配もなく参加しなさいというのは非常に難易度が高いと言えます。
さらに受け入れる(企業)側としても、“コミュニティとして新しい人を受け入れる教育体制”が整っている企業は非常に少なく感じます。
その結果、残念なことに今の日本では、どんなに素晴らしい能力や知識、技術、可能性などを持っていたとしても、コミュニティに所属して活動できるかどうかは個人のセンスに寄ってしまっているのが現状です。
企業内カウンセラーとして活動する私の目から見ると、最近ではインターン制度の充実や入社後のメンター制度などで補っているものの、体制が整っていると感じる企業はほぼ見かけません。
中途社員の入社にしても、幼稚園・保育園のママ友の輪や学校の転校、引っ越しによる近所付き合い、身内の誰かが亡くなってしまったなど、誰でもいつでも新しい環境に慣れなければいけない場面が生じうることは想定できます。
その度に、すべての人は個人の努力で自分の精神を削りながら頑張って適応を行おうとしますが、どんな強靭な精神力を持った人でも、人間である以上どこかで限界が来てしまいます。
心をむしばむ原因
うつ病や適応障害など、いわゆる精神疾患の原材料は“抑圧と抑制”だと言えます。
抑圧という言葉は非常に幅広い捉え方をされますが、ここでは防衛機制の“抑圧と抑制”を指します。
まだ読んでいない方はこちらをお読みください。
心理学から学ぶ【防衛機制 抑圧とは】
心理学から学ぶ【防衛機制 抑制とは】
“抑圧”を端的に言えば、自分が到底受け入れられないような考え方や感情、思い出や記憶を否定してなかったことにしたり、忘れようとすることを指します。
(抑制は、抑圧よりも軽い状態と認識して差し支えありません。)
私はうつ病や適応障害を患った方を多くカウンセリングしてきましたが、“抑圧”の状態を経過・経験していない方は1人としていませんでした。
心を苦しめる原因や、過大なストレスを感じてしまう「事象」は人それぞれあります。
しかし、どんな「事象」や「理由」であっても、心が“抑圧”された状態であるということはすべての人に共通しているのです。
自分自身の考えを抑えつけたり、自分自身の気持ちを表現できずに過ごさなければいけない状態は、言い換えると自分自身のアイデンティティを否定するということです。
多くの人は、自分自身がどういう人なのか、どういう風に見られているのか、そういったことを考えたり悩んだりします。
その結果、自分の表現の仕方を少しずつ変えていきます。
例えば、洋服や髪形、メイク、しぐさ、歩き方、しゃべり方、いろいろな試行錯誤の結晶が、その人の個性や特性を表しているのだとカウンセラーとしては考えています。
しかし、そんな自分を押し殺したり、表現することを極端に抑えつけられれば、自分自身の存在意義や1つしかない個人を否定することになり、心の苦しさが増していきます。
うつ病や適応障害の原因を抑圧や抑制から言い換えるのだとしたら、“自分自身を否定する”ということだと言えます。
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ここまで説明してきましたが、イメージがつきづらい方もいらっしゃると思います。
具体的事例についてカウンセリングレポートも作成していますので、ぜひ併せて読んでみてください。
カウンセリングレポート|心が抑圧された状態の実例
今回、FABOnews.では“抑圧”という防衛機制から心の苦しむ原理の説明をさせていただきました。
現代ではインターネットでいろいろなうつ病や適応障害の原因説明がされています。
そうやって見識を広める環境が身近にあるというのは喜ばしいと言えます。
しかし、読者の皆さん本人、または読者の身近な方などが“抑圧”で苦しんでいるとしたら。
その苦しみや悩みから抜け出すためには、このような原因を知るだけでは「前向きに明日を生きよう」なんて簡単に思えないのも事実です。
過重に心が抑圧されることでうつ病や適応障害になるということが理解できたところで、“抑圧”をどうすればよいのかというのがわからなければ対処の使用がありません。
“今苦しい”という苦しさから抜け出すのではなく、“なぜ苦しいのか”という原因を理解することができれば、状況や見えてくる景色は大きく変わります。
次回の記事では“あなたの苦しさの本当の正体”を知って1歩踏み出すためのお話をさせていただきます。
神奈川県生まれ。心理カウンセラー・キャリアコンサルトの有資格者。うつ病 / パニック障害 / 適応障害 / 依存症 / などの精神疾患から仕事や日常的な悩みなどを幅広くカウンセリング活動を行う。社会問題から心理学関連、カウンセラー活動記録、研修・教育、など人や仕事に関わるジャンルでライティングを行う。趣味は、アニメ鑑賞、競馬、散歩。採用コンサルタント、就業ケアマネージャーとしても活動。