自殺…自分で自分自身の人生を終わらせる行為
これが悪いことなのか、必然で自然なことなのか、その答えは非常に難しいです。
しかし、命をむげに扱ったり、解決できる問題にさいなまれて命を落としたり、ということは認めたくないものです。
人間には命があります。
生まれてから死ぬまでの間、いろいろな人と出会い、いろいろなことを経験します。
そして、死ぬときには「生まれてきてよかった」「生きてきてよかった」と思えることが、望ましい形の1つではないかと思っています。
今回は、自分の命を絶つ「自殺」の種類と、そのときの「こころ」についてご紹介したいと思います。
自殺を種類別にすると、
1.自己本位的自殺
2.集団本位的自殺
3.アノミー的自殺
4.宿命的自殺
の4つが存在します。
それでは、1つずつ紹介していきます。
1.自己本位的自殺
自己本位的自殺とは、孤独感が強い理由になっている自殺念慮です。
社会や団体、グループと結びつきが弱いと感じるのを理由に自殺してしまうことを指します。
この時、こころはひどく孤独感を感じています。
特にグループや集団で楽しそうなところを見ると、孤独感は強くなります。
「この世にひとりぼっちで誰も自分のことを分かってくれない…」
「結局自分はこの世に必要ない…」
そんなふうに思ってしまいます。
<こんなときは要注意>
・かたくなに1人でいることを望む。
・人付き合いを拒む。
・以前と違って話す内容の規模が大きい。(例:世界では…、世の中は…など)
2.集団本位的自殺
集団本位的自殺とは、自己本位的自殺とは真逆で、集団との結びつきが強すぎることが理由になっている自殺念慮です。
自分が所属している社会や団体、グループとの結びつきが強く、そのなかでミスをしてしまったり、ケンカをしてしまったり、集団の意とはそぐわない考え方を持ってしまう、といったことが理由として考えられます。
この時、こころは
「みんなを裏切ってしまった」
「これは背信行為だ」
などと思い、罪悪感や後悔、自己嫌悪という気持ちで埋め尽くされてしまいます。
「みんな大丈夫だと言うけれど、きっと心のなかではお荷物や邪魔者だと思っているはず…」
「自分がこんなにすてきな人たちと一緒にいること自体が間違っているんだ…」
このような気持ちが想像できます。
<こんなときは要注意>
・集団のなかでの自分の存在を否定する。
・自分を裏切り者・背信者のように話す。
・無意味に集団から距離を置きたがる。
3.アノミー的自殺
アノミー的自殺とは、社会経済の大きな変動、または本人の経済的な変動によってあらわれる自殺念慮です。
不況になると、今までの生活レベルを保つのが難しくなったり、そもそも仕事がなくなったりすることがあります。
直近で言うと、2020年~2021年の新型コロナウイルスによる経済影響に近い状態ですね。
金銭的な苦慮が続くと、生活ができず自殺しなければならないという状況に陥ります。
この時、こころは明るい未来が閉ざされ、明日の生き方が分からない絶望感に埋め尽くされます。
また逆に景気が良くなると、それまで質素に過ごしていたはずの人たちは、好況な状況による欲望が出てきます。
そうするとその欲望が大きくなりすぎて、お金でも行動でも満たせない欲望が作られてしまいます。
この場合は、裕福であるはずなのに自分で望んだものを手に入れられないというような混乱が、こころにのしかかってきます。
社会の好況によって作られた世界観についていけなくなり、苦しくなるということもあり得るのです。
<こんなときは要注意>
・職を失った、生活苦に陥っている、またそれを隠している。
・借金を返す目途が立たない、さらなる借金もできない状況。
・急激に収入が増え、お金や行動では得られない非現実的なものを欲するようになった。
・お金と欲望の話のバランスがおかしく、つじつまが合わない話をするようになった。
4.宿命的自殺
宿命的自殺とは、古くからの風習や伝統などが強い理由になっている自殺念慮です。
言葉からはあまり想像がつきづらいですが、次のようなことを指します。
・古くから残る人種差別による迫害
・現代では適用されないような非人道的な扱いを受けている場合
性差別、家柄での差別などもこれにあたります。
つまり、現代社会にアップデートされていない概念によって苦しんでしまうようなイメージをしていただくとわかりやすいかと思います。
こちらについては、本人の問題というより、イジメなどと同じで本人には回避しづらいことが想像されます。
<こんなときは要注意>
・様子がおかしいのに、理由を聞いても応答の歯切れが悪い。
・仲がよくないと思われる特定の誰か、またはグループと度々一緒に過ごしている。
・ある特定の人や団体と話をしたがらない。
自殺と精神疾患
自殺をする人は、直前にうつ傾向が高まるといった発表があります。
厚生労働省は、自殺者について「少なくとも90%に広義の精神障害が認められ、そのうちの約半数がうつ病など」と発表しています。
基本的に自殺は、前述した4種類のうちのいずれかに当てはめることができます。
4種類の自殺すべてで共通していることとしては、自分以外との何らかの関わりを持っているということです。
友達、恋人、同僚、先輩後輩、グループ、団体などのコミュニティという枠組みに所属する以上、そのなかで気持ちや行動、考えなどをある程度抑制しなければコミュニケーションは成立しません。
そこで、自分自身と社会に対する考え方次第では、強い圧力や圧迫を感じる状況が継続してしまい、うつ傾向が高まります。
それでも「みんなそのなかで普通に生きていますよね?」と尋ねられることがあります。
自殺を考える人と、その人と関わりを持つ他者の感覚は異なっていて、その人にしかわからない苦しみや悲しみ、絶望感などがあります。
誰かにとっては当たり前のことでも、他の人にとっては苦しいことだったりします。
結論として、「普通に考えれば…」「一般的には…」「常識的には…」といったことは、“あなたなら”大丈夫なのでしょうと答えるほかありません。
自殺の4種類で考えると、ほぼ100%社会的な抑圧を受けていますので、”うつ傾向になる”というのは当たり前のことなのです。
(うつ病については以下の記事でもご紹介しています。)
・うつ病は決して特別なものじゃない
・いろんなうつ病を知ろう(リンク)
最後に
自殺の根本は本人の問題であることに変わりはありませんが、どんな人も大なり小なり人と関わらずには生きていけません。
そんななかで、1対1の人間関係、小さいグループ、大きいグループ、団体や組織など、さまざまなコミュニティやソーシャルネットワークを持っています。
自殺の理由のほとんどは、人間関係や社会が“自殺したい”と思わせる環境を作ってしまうことが多いと考えます。
それであれば、自殺を促すことのない社会を作っていくことこそが、現代において必要とされているのではないでしょうか。
社会保障やさまざまな機関だけではなく、1人1人が社会そのものをどうゆう風に作っていくのか、考えるきっかけになれば幸いです。
神奈川県生まれ。心理カウンセラー・キャリアコンサルトの有資格者。うつ病 / パニック障害 / 適応障害 / 依存症 / などの精神疾患から仕事や日常的な悩みなどを幅広くカウンセリング活動を行う。社会問題から心理学関連、カウンセラー活動記録、研修・教育、など人や仕事に関わるジャンルでライティングを行う。趣味は、アニメ鑑賞、競馬、散歩。採用コンサルタント、就業ケアマネージャーとしても活動。