<アニメシリーズ>鬼滅の刃 無限列車編
<アニメシリーズ>鬼滅の刃 無限列車編 ―竈門炭治郎を考察―
ぜひ前回記事と併せて読んでみてください。
本記事では、『鬼滅の刃』の作者 吾峠呼世晴さんが、無限列車編で「夢」という側面からキャラクターに対して何を描いたのかを考察します。
今回は我妻善逸の考察です。
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』より我妻善逸
(C) 吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
我妻善逸は、雷の呼吸の使い手で、気を失ったり眠ったりすると驚異的な力を発揮するキャラクターです。
普段は気弱な性格で、炭治郎の妹の禰豆子を好いています。
善逸の無意識の世界を考察
善逸の夢では、森の中を禰豆子と一緒にデートをする様子が描写されていました。
その雰囲気はとても明るく楽しく幸せそうなものでした。
普段はあまりなついていない禰豆子も、仲良く接していましたね。
これは炭治郎と同じように、魘夢(えんむ)が夢の中で幸せを与えることで深い眠りに誘っているようです。
善逸自身が意識できない心の中を考察すると次のようになります。
■足元も見えないくらい真っ暗な場所
無自覚の中だと1人でいることが望ましいと思っていることが伺えます。
少し悲しい背景を持っているのかもしれません。
真っ暗であるというのは、誰も信じていないというより、他の誰かに何かを望むより1人でいる方が良い(気楽)といったイメージで、非常に排他的なパーソナルエリアです。
■善逸が狂気的な性格で登場し、大きなハサミをもって魘夢の使いの子どもを追いまわしている
ここで登場する善逸は、性格が打って変わって猟奇的な感じでした。
立ち入ってほしくない場所に入ってこられて憤慨しているようです。
これは普段の善逸からほど遠いですが、初めて禰豆子と顔を合わせ、炭治郎に問い詰めたときと似ています。
善逸は怒りをきっかけに、無意識世界の自分を時として現実世界で表現していると言えます。
フロイトでいう「無意識」の自分が理性で抑えられず、バランスが崩れて表に出てきたという感じでしょう。
■善逸のセリフ「ここに入っていいのは禰豆子ちゃんだけなんだ」
善逸のパーソナルエリアには、自分が認めた人だけが入っていいのだということが分かります。
善逸は自分が認めた特定の人には心をオープンにしますが、それ以外の人物に対しては、心の奥底で関わりたくないと思っています。
善逸は現実世界の人間に近い感性なのかもしれません。
とても現代人に近い人間味を感じます。
炭治郎とは全く別の世界観ですね。
善逸の強さと夢のつながり
カウンセラーとしては、本作で善逸の活躍を期待していた面がありました。
それは、善逸の強さである“寝ると強くなる”ということです。
これは夢遊病またはそれに近い睡眠障害と考えられます。
(精神疾患方面の話ですので、ずっと気になっていたキャラクターが我妻善逸でもあります。)
魘夢が夢や眠りの血気術を使うことから、善逸の覚醒や飛躍的に強くなるような描写を想像していましたが、結果としては寝ながらにして戦ったということにとどまりました。
※ここから無限列車編より後のネタバレが含まれますのでご注意ください。※
ただし、実は善逸は、この無限列車編の後の遊郭編から“寝ないで戦う”ということができるようになっています。
当然ながら本人は寝ると強くなることを知らないので無自覚です。
遊郭編では上弦の鬼と戦うことになり、非常に切羽詰まった状況が長く続きます。
そのことから、善逸が寝ていないにも関わらず、雷の呼吸を駆使して戦う違和感はストーリのスピード感に紛らわされていますが、起きている状態で雷の呼吸を使うようになっているんです。
この変化は気付きづらいことかもしれないですが、明らかに無限列車編がきっかけだと考えます。
つまり、善逸は無限列車編の中で覚醒したのではなく、無限列車編を経験したことで覚醒したのだと言えます。
煉獄杏寿郎が与えた善逸の覚醒
本作では直接的な絡みが少なかった善逸と杏寿郎ですが、その後の善逸の変わりようを見るとしっかりと善逸にも影響があると感じます。
善逸は寝たり気を失ったりして力を引き出すとき、必ず“何かを守るため”に力を奮います。
鼓屋敷では助けに来た子どもを守るため霹靂一閃を使い、
那田蜘蛛山では蜘蛛になってしまうという恐怖から失神したのを機に、霹靂一閃6連を繰り出し、雷の呼吸を使ってみんなを助けることで、おじいちゃんに恩返しするかのように奮闘しました。
無限列車編で煉獄杏寿郎と出会い、その人の死によって、強いこととは守れることだと悟ったのではないかと考察しました。
上弦の鬼 猗窩座(あかざ)から命をかけて守ってもらった経験を通じて、誰かを助けるために力を付けること、守るために強くなることを学び、自分の力を無意識下ではなく、意識化のなかで使うことに成功したのではないかと思います。
善逸は無限列車での戦いから、とても心が成長したと言えます。
誰かを守るということの素晴らしさ、そしてその強さを煉獄杏寿郎から学んだのでしょう。
アニメ遊郭編でも活躍する姿を期待しています。
アニメ『鬼滅の刃』より我妻善逸
(C) 吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
※禰豆子の「禰」は「ネ+爾」が正しい表記です。
神奈川県生まれ。心理カウンセラー・キャリアコンサルトの有資格者。うつ病 / パニック障害 / 適応障害 / 依存症 / などの精神疾患から仕事や日常的な悩みなどを幅広くカウンセリング活動を行う。社会問題から心理学関連、カウンセラー活動記録、研修・教育、など人や仕事に関わるジャンルでライティングを行う。趣味は、アニメ鑑賞、競馬、散歩。採用コンサルタント、就業ケアマネージャーとしても活動。