『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』が公開されてから1年。
興行収入は400億円を突破し、日本歴代興行収入第1位を獲得(2021年現在)しました。
そして、2021年10月からは『テレビアニメ「鬼滅の刃」無限列車編』が開始され、まだまだ勢いが止まりません。
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無限列車編の最初の敵である魘夢 (えんむ)は、血気術「強制昏倒催眠の囁き」「強制昏倒睡眠・眼」によって対象者を眠らせることができ、相手に応じて夢の内容をコントロールできる鬼です。
物語序盤で炭治郎、善逸、伊之助、杏寿郎は幸せな夢を見させられました。
ここで、心理学の視点から『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の作中で見逃せないシーンがあります。
実は「夢」というのは、心理学のなかの精神分析学と非常に深い関わりがあります。
なかでも夢分析については、フロイト、ユングという心理学者を発端に、現代まで研究が続いています。
本作品上における「夢」と、心理学上でいう「夢」は共通点が多く、心理カウンセラーとしての視線から見ると、各登場人物の性格や人物背景が非常によく表れていると考察できます。
(※あくまでも心理カウンセラーである筆者の考察ですのでご注意ください。)

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』ポスタービジュアル
(C) 吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
魘夢の言う夢の定義とは
魘夢は夢について、
―眠り鬼・魘夢の見せる夢は無限には続いていない 夢を見ている者を中心に円形となっている 夢の外側には無意識の領域があり 無意識の領域には“精神の核”が存在していて
これを破壊されると持ち主は廃人になる―
(集英社:コミックス『鬼滅の刃』7巻より)
と説明しています。

集英社:コミックス『鬼滅の刃』7巻より
「無意識」という言葉、「夢」という概念、これらの言葉を世の中に広めたのが先述しているフロイトと言われています。
夢を「無意識」という概念を使って説明し、精神分析学と同じ「精神」という言葉を「精神の核」というフレーズで使っていることから、作者の心理学に対する何らかの意図を感じてしまいます。
この説明の後、実際に炭治郎たちが夢に堕ちていく様子が水中に落ちていくシーンとして描かれています。
これは漫画では気付きづらかった点です。
実はこの“水の中に落ちる”というのは、フロイトの精神分析学において誰もが通る表現なのです。
フロイトの精神分析学と夢とは
―心とは氷山のようなものである。
氷山は、その大きさの7分の1を海面の上に出して漂う。―
(ジークムント・フロイトの言葉)
この言葉通り、フロイトは心や精神を解釈するために氷山を例として多く用います。
次の図のように、精神を階層に分けて説明します。

精神・こころは、上から「意識」「前意識」「無意識」によって分けられます。
海上に浮かび上がる部分を「意識」と呼び、意識下の人間の心は全体の7分の1ほどであるとしたのです。
そして残り大半の7分の6は「前意識」と「エス・イド」で構成されているという理論を伝えました。
第1層 意識 …自分自身が自覚できる自分の心
第2層 前意識 …思い出そうとすると思い出せる領域の心
第3層 無意識 …自分自身では全く自覚できない心
同時に第1層の「意識」は自我として自覚した行動や思考、気持ちを構成します。
理性と欲求を区別する個人としてのバランスを保っているイメージです。
第3層の「無意識」はエス(またはイド)と言い、無自覚な欲求や行動を指します。
衝動、欲望、本心、自分が気付かず欲しているもののイメージです。
そして、第1層から第3層までの橋渡しとして「超自我」が存在しています。
「超自我」とは良心と言われており、自我の抑制や監視を行って、理想の自分を形成するために機能しています。
(※これをフロイトの局所論と言いますが、非常に奥が深いため、また機会があれば記事を作成します。)
無限列車編で炭治郎が水の中に落ちていく描写はまさに、このフロイトの言う海面に浮かぶ氷山の無意識層へ落ちていくこととつながりを感じます。
そして、魘夢が言う「夢の外側にある無意識領域の精神の核」という表現は、フロイトの氷山の説明と一致します。
氷山のある海では、その海水は非常に澄んでいて、深くなるにつれ太陽の日差しが届かなくなり真っ暗になります。
それと同様、映画内でも澄んだ水の中に深く沈んでいくにつれ、暗くなっていくように表現されています。
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次回からは、作者の吾峠呼世晴さんが直接的に描いていないキャラクターへの考えやイメージを、夢の中の炭治郎、善逸、伊之助、杏寿郎を元に心理考察してみます。
(※コミックス最終回までの1部ネタバレを含みますのでご注意ください。)
作中では直接的な言葉を使って表現されていなかったキャラクターイメージが、この考察で明確になったり、新しい性格特性を感じたりすることができると思いますので、ぜひ読んでみてください。
神奈川県生まれ。心理カウンセラー・キャリアコンサルトの有資格者。うつ病 / パニック障害 / 適応障害 / 依存症 / などの精神疾患から仕事や日常的な悩みなどを幅広くカウンセリング活動を行う。社会問題から心理学関連、カウンセラー活動記録、研修・教育、など人や仕事に関わるジャンルでライティングを行う。趣味は、アニメ鑑賞、競馬、散歩。採用コンサルタント、就業ケアマネージャーとしても活動。