<アニメシリーズ>鬼滅の刃 無限列車編
ぜひ前回記事と併せて読んでみてください。
本記事では、『鬼滅の刃』の作者 吾峠呼世晴さんが、無限列車編で「夢」という側面からキャラクターに対して何を描いたのかを考察します。
まずは竈門炭治郎の考察です。
炭治郎が見た夢
鬼滅の刃 無限列車編では、魘夢(えんむ)の仕掛けた血鬼術で強制的に眠らされた炭治郎が次のような夢を見ます。
・鬼舞辻無惨に殺されたはずの家族が生きている
・家族みんなで以前と同じ日常を送っている
・炭治郎は何かを忘れてしまっているような気がするが思い出せない
炭治郎にとって、家族がとても大切で愛すべきものということは、生き残った禰豆子への言動でわかると思います。
魘夢は炭治郎にとって最高に幸せな夢を見せることで、その夢の中から覚めたくないという感情を抱かせて、深い眠りにつかせ、夢の外側の無意識領域にある精神の核を破壊することが目的と言っています。
魘夢は幸せな夢を見せることと引き換えに、一般の子供たち4人に眠らせた炭治郎たちの精神の核を壊すように命令し、夢の中へ向かわせました。
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』より
(C) 吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
無意識の中にある精神の核
無意識の中にある精神の核こそが、その人の本当の人間性と根源であると言えます。
精神分析学上、「無意識」というのは前記事でも述べている通り、無自覚な欲求や衝動、欲望、本心、自分が気付いていない心です。
ではなぜ気づくことができないのか。
それは、意識層より無意識層の記憶領域が圧倒的に多いことにあります。
人間は多くの出来事・事象を記憶すると、時間の経過やその質量が増えるにつれて忘れていってしまいます。
この「忘れる」というのはなくなっているわけでなく、そのほとんどは無意識の中に保管されているという概念です。(フロイトの無意識概論より)
炭治郎の無意識の世界を考察
炭治郎の精神の核があった場所を覚えていますでしょうか。
揺らぐ水面が地面となっていて、どこまでも続く青い空といくつかの真っ白な雲、そして太陽。
とても広く静かで暖かい場所に光る6人の小人がいました。
無意識層は前述の通り、記憶や思い出で構築されています。
特に家族に強い思いがある炭治郎です。
この6人の光る小人は、亡くなってしまった父、母、兄弟4名の計6名だと想像できますね。
炭治郎自身が意識できていない心の中を考察すると、次のようになります。
■どこまで続く広く穏やかな世界
炭治郎の心の中は静かで、平穏や安寧を欲していることが分かります。
作中でも分かる通りですが、皆で仲良く何の変哲もない日常を送りたいと願っているのではないでしょうか。
■光る6人の小人
心の中で片時も忘れず家族を思っていること。
そして、その6人の家族を尊敬し、守り、大事にしているということの表れだと思います。
作中では、炭治郎がピンチになると、度々家族が炭治郎の心に呼びかけてきます。
これは、無意識の中から「お母さんだったら」「お父さんだったら」「兄弟だったら」というような呼びかけをしているのではと考えられます。
これは禰豆子にも同じことが言えますので、禰豆子のなかにも光る小人がいるのではないかと考えられます。
■小人が精神の核へ敵を連れていく
これは、炭治郎がどんな人にも優しく、誰ともで仲よくしようとする心が反映されています。
作中では、時に鬼にも同情したり心を寄せたりしますよね。
これは、後述する同じく夢に堕ちた他のキャラクターにはない特性だと思います。
蝶屋敷の場面では、蟲柱の胡蝶しのぶから「君になら自分の夢を預けられる」という旨の話をされていますが、これも炭治郎なら鬼と仲良くできるのではないかと直観的に思ったのかもしれません。
炭治郎の心
誰だって勝手に心の中をのぞかれるのは心地よいものではありません。
炭治郎の1番の特徴は、土足で自分の精神の核に踏み込まれても許し、仲よくしようとする心の広さだと考察しました。
精神の核がある無意識の世界も広く美しく穏やかな場所だったように、その心の広さと受容力こそが炭治郎なのだと思います。
また、炭治郎は父親の声を聞いて、自分の首を切ることで夢から覚めることができるということに気付き、何度も何度もそれを繰り返しできる心の強さもあります。
まさに主人公であり、物語の中心人物にふさわしい心の持ち主です。
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』宣伝ポスター
(C) 吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
※禰豆子の「禰」は「ネ+爾」が正しい表記です。
神奈川県生まれ。心理カウンセラー・キャリアコンサルトの有資格者。うつ病 / パニック障害 / 適応障害 / 依存症 / などの精神疾患から仕事や日常的な悩みなどを幅広くカウンセリング活動を行う。社会問題から心理学関連、カウンセラー活動記録、研修・教育、など人や仕事に関わるジャンルでライティングを行う。趣味は、アニメ鑑賞、競馬、散歩。採用コンサルタント、就業ケアマネージャーとしても活動。