カウンセリングレポート|感情鈍麻(アパシー)の症状事例

カウンセリングレポート|感情鈍麻(アパシー)の症状事例

あなたの身の周りにも、同じような思いをしている方はいらっしゃいませんか?


はじめに

この記事では、『何も感じない、何の感情も湧かない… それは感情鈍麻(アパシー)かもしれません』で紹介した内容の事例を記載しています。

まずは上記の記事をご覧ください。


抑制された環境や関係性のなかで感情を押し殺し続けた結果、何も感じなくなってしまう感覚鈍麻(アパシー)。

○○をしなければならない、絶対に○○してはいけない、○○を考えることを指示され続ける…

自分自身で物事を選択できない環境、自由な思考を制限される環境などで、“強要"されることを長く続けている場合、その人は思考や感情の自由が奪われている状態にあります。

したがって、誰かに支配されている世界の中で生きる必要があるような生活を送っている状態です。


筆者のカウンセラーとしての経験のなかで、実際に感情鈍麻(アパシー)の症状が現れていた方の事例をご紹介します。



(1)パワハラやモラハラが行われる職場環境で働く男性
客観的に見て非常に難易度が高く、業務量が多い仕事を任されている彼は37才の係長でした。

年下に役職で抜かれてしまうような状況に、自分自身も早く昇格したいという気持ちがあり、がむしゃらになんでも会社側の言うことを聞いていました。


しかし、頑張っても能力が飛躍的に上がるわけではなく、失敗ばかり。

そんななかで、上司から「もっと頑張れ」「頭が悪い」など叱責(しっせき)されることが続きました。

そんな叱責に、無力感や怒りが湧いては我慢する日常を繰り返し、2ヵ月ほどそれが続いた頃、気が付くと彼は上司に何を言われても何も感じなくなっていました。

言われたことをどう処理するのが望まれるかだけを考えるようになっていたのです。


次第に、私生活でも、相手が誰でも、何も感じなくなってしまう感情鈍麻(アパシー)の状態になってしまいました。



(2)妻の言うことが絶対になってしまった夫
恋人から夫婦になった途端、彼は妻から罵倒をあびせられたり、暴力をふるわれるようになりました。

仕事で成果が上がらずに昇給昇格しないことから話が始まり、「ダメ人間」「使えない人間」「能力のない馬鹿な人間」などとエスカレートしていったようです。

そして、妻の気にくわない受け答えをすると、罵倒とともに殴る蹴るというようなことも常態化していきました。


彼は当然会社でもうまく仕事ができず、居場所や安心感を得ることができませんでした。

彼は妻に対してムカつくという感情は常に持っていたようですが、
言われる内容に慣れてしまったようで、ムカつくというボーダーラインが明らかに上がってしまったようでした。

なので、言い返すほどの怒りを感じることが少なくなったようです。


これは、怒りという感情のボーダーラインが上がり、その他のことはほとんど感じなくなってしまったパターンの感情鈍麻(アパシー)と言えます。



こういった事例の他にも、イジメなどの誰かに従うしかないような状況や、親からの一方的な強要などを想像していただければわかりやすいと思います。

事例(1)と(2)に共通していることは、本人の感情や思考の必要性がないような環境下だということです。

他の誰かや環境によって、思考の自由を奪われている状態です。


モラトリアムの記事でも紹介しているように、人間形成や自我の形成のなかで最も重要なことは、自分で自分の意思や進むべき道を意思決定することです。

人は自分の意思決定がうまくできない世界のなかでは、多大なストレスを感じ、他の人のための意思決定では当然“やる気”は出ません。

その結果、うつ病などの精神疾患の恐れや感情鈍麻(アパシー)が発症する可能性が高くなるのです。

いかかでしたでしょうか。

聞きなじみのない感覚鈍麻(アパシー)という言葉だけを切り取ると、自分には縁がないと思えるかもしれませんが、
実際の相談者の内容からいつでも起こり得る可能性があるものだと認識いただけたと思います。

こちらの記事内では、対処法なども紹介していますので、ぜひ併せて読んでみてください。

この記事のライター

神奈川県生まれ。心理カウンセラー・キャリアコンサルトの有資格者。うつ病 / パニック障害 / 適応障害 / 依存症 / などの精神疾患から仕事や日常的な悩みなどを幅広くカウンセリング活動を行う。社会問題から心理学関連、カウンセラー活動記録、研修・教育、など人や仕事に関わるジャンルでライティングを行う。趣味は、アニメ鑑賞、競馬、散歩。採用コンサルタント、就業ケアマネージャーとしても活動。

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