大学生、専門学生、新卒入社前の皆さんにどうしても伝えたい“モラトリアム期"

大学生、専門学生、新卒入社前の皆さんにどうしても伝えたい“モラトリアム期"

キャリアコンサルタントが語る“苦しみの種”。これを知らずに苦しまないでほしい。


専門卒業後、大学卒業後、多くの人は会社員になります。

その会社員になった方の中で一定数ではありますが、入社から数カ月、早ければ数週間で会社を辞めてしまう方が存在します。

それも、探せば少なくない数です。

そして、もしかしたらこの記事を見ている新卒の読者さんのなかにも、「辞めたい」「いつ辞めたっていい」と思っていながら“まだ辞めていないだけ”の方も大勢いらっしゃるのではないかと思います。


それでは、なぜ早期退職者が後を絶たないのでしょうか。

私はカウンセラーとして、新卒の面談、新卒向けカウンセリングを何名も行ってきています。

新卒社員側に問題がある場合、企業側に問題がある場合、どちらにも問題がある場合、
さまざまなシチュエーションが考えられます。

特定の問題ではなく、さまざまな問題が多岐にわたっていて、「これが問題だ」という提言をするのは非常に難しいです。


ただし、早期退職を選択する人たちの傾向として共通している部分があります。

それは、とても悩み苦しんだうえで退職をするという選択をしていることです。
ちょっと合わないから、つまらなかったから、などという半ばお気楽な理由はほぼ存在しません。

それもそうだと思います。

在学中から進路を考え就活をして、苦労して手に入れた就職先です。
簡単に辞めるという決断をしているわけではないのです。

皆さん、自分自身と会社、先輩や上司と向き合って苦しんだうえで会社を辞めるという選択をしているのです。

新卒社員の多くが何かに苦しんでいることは間違いないということになりますが、それがなぜ起こるのかという答えを出すのは、前述した通り一定の提言が難しいです。

そこで、“苦しみの種”を知ることで、苦しまないための予防策をお伝えしたいと思います。

読者の皆さんは、モラトリアム期をご存じでしょうか?

モラトリアムとは、もともと英語で「支払いの猶予」という意味の言葉です。

しかし、心理学や学校教育上の意味としては、単純に猶予や待機といった意味合いで使われています。

モラトリアム期=猶予される、または待機される期間という意味です。
人により異なりますが、一般的には18歳~22歳頃に訪れる次のような状態を指す期間です。


1.自我(アイデンティティ)が発達途中の状態

2.自己による意思決定をしようと模索している状態

3.上記2つを試行錯誤している状態


このモラトリアム期を知り理解するだけで、新卒社員となった時の苦しみの緩和材料になったり、あるいは問題の解決をすることが可能になります。

では、1つ1つ解説していきます。

1.自我(アイデンティティ)が発達途中の状態

モラトリアムを経過した人は、自分が何者で、自分は将来こういう風になるんだ、またなるんだろうという自信や確信に近い感覚を手に入れています。

発達途中の状態とは、まだ自分自身に対して自信や確信がない状態となります。


2.自己による意思決定をしようと模索している状態

自分なりの自我の答えを導き出し、さらに意思決定を行う覚悟の場面となります。

別の言い方をすると、大事な選択を覚悟をもって行おうとしている状態です。


3.上記2つを試行錯誤している状態

自我の自信や確信を一時的に持ったうえで意思決定を行おうとするが、それができず、もう1度自我を作り直し意思決定をしようとするループを行っている状態です。



まさに新卒社員は、このモラトリアム期の直前直後のタイミングとなります。

なので、会社に入ったばかりだといろいろ悩んだり苦しんだりすると思いますが、このように新しく生まれる悩み以前に、そもそもモラトリアムによる試行錯誤や模索が同時進行している可能性が高いのです。

私がカウンセリングを行った相談者の悩み方もモラトリアム期の特徴に似ていることから、このモラトリアム期を理解することが問題解決に効果的だと考えています。


例えば、

・他人の意見や命令に違和感を感じる…

・他人から見た自分の印象やイメージにズレを感じる…

・自分がやっていることに意味を感じられなくなる…

・自分の存在価値が漠然としてきてよくわからなくなる…


そんな時は、モラトリアムを思い出してみてください。
苦しいと思っているとき、そもそも自分が悩んでいることに気づいていないかもしれない。

また、悩んでいるけど何に悩んでいるのか分からなくなってしまっているかもしれません。

まずは、自分自身は悩んでいいんだ、そういうタイミングなんだと思ってみてください。

そのうえで自分自身がどんな人物なのか、どんな人物でいたいのかを考えてみてください。

すぐに答えは出ないかもしれません。
そんなときは無理に答えを出そうとせずに、自分が1番気を張らずにいられる自分を見つけてみましょう。

悩んでいい理由がそこにあるんです。
すべてがうまくいかない理由があるんです。

社会人になったのだから、と片意地を張る必要はありません。

モラトリアム期であることを知り、自分が自分自身を考える時間だと思ってなるべく苦しみから解放されることを願っています。

さいごに

どうしてもどうしていいかわからない、消えたい、死にたい、など思う方もいると思います。

そんな時は心理カウンセリングやキャリアカウンセリングを受けてみるのもいいかもしれません。
相談に乗ってくれる機関はいくつも存在します。


FABO news.の運営するサービスにもカウンセリングサービスがあり、有料相談、無料相談、どちらもありますので、興味があればいつでもご相談ください。

この記事のライター

神奈川県生まれ。心理カウンセラー・キャリアコンサルトの有資格者。うつ病 / パニック障害 / 適応障害 / 依存症 / などの精神疾患から仕事や日常的な悩みなどを幅広くカウンセリング活動を行う。社会問題から心理学関連、カウンセラー活動記録、研修・教育、など人や仕事に関わるジャンルでライティングを行う。趣味は、アニメ鑑賞、競馬、散歩。採用コンサルタント、就業ケアマネージャーとしても活動。

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