2020年から2021年にかけて、「男性の産後うつ」という言葉を聞くようになりました。
初めて聞いたときは、「男性の産後うつ」というフレーズに自分の耳を疑いました。
心理カウンセラーの立場として、多くのうつ病患者や軽度のうつで悩む方と話すことが多いですが、
産後うつはやはり女性特有のものであり男性がなりえるものではない、というのが「男性の産後うつ」という言葉を聞いたときの率直な感想でした。
まず産後うつについて、多くの精神科医やメンタルクリニックで診断される判定として、
どのように定義されとらえられているのかを記していきたいと思います。
産後うつとは、出産を終えた女性にたいして、精神が不安定に変調することでうつ傾向が強く出た場合に診断されます。
出産は女性にとって非常に体に負担がかかります。
妊娠中はお腹が大きくなるという身体的な変化が生じたり、妊娠前と妊娠後ではそれまでの性格と異なっていくことも少なくありません。
また出産を終えると、女性は妊娠中とは異なる体になります。
母乳が出ることもそうですし、大きくなったおなかも元に戻る準備が始まります。
その際に、当然ながら心も精神的な変調が起こります。
具体的には、
・産後のホルモンの急激な変化によっておこる気分や体の異変
・出産の疲れやストレスによる気分や体の異変
・赤ちゃんを育てるための体や心の変化
このようなことが代表的です。
症状としては涙もろさや夜眠れないこと、不安感やイライラするなどが挙げられます。
個人差がありますが、2週間程度続くことが多く、
長い人ではその状態が常態化してしまう人もいます。
これらのことを踏まえ、先に申し上げたいことは、これまでの産後うつの概念から考えると、「男性の産後うつ」というものは存在しないということです。
産後うつは女性特有のものであり、女性以外なりえない苦しみと言ってもよいと思います。
それでは本題となりますが、なぜ男性の中には自分も産後うつだという方が存在するのでしょうか。
SNS上で自分も産後うつだと発信されている方の意見をいくつか取り上げてみると、
「男性は育児がつらいと言ってはいけなくてつらい、これは産後うつだ」
「男性は産後のセーフティーネットがない」
「男の産後の生活のつらさを無視するのか」
このような意見があることを確認しました。
もしこれで精神を不安定にしてしまったのであれば、育児ノイローゼか一般的なうつ病でしょう。
当然、男性も育児開始や生活環境の変化などを原因に、うつ傾向が強まったりうつ病になる方はたくさんいらっしゃいます。
しかし、それは心理カウンセラーとしての立場から申し上げると、産後うつではありません。
子どもが生まれたのを期に、その後のパートナーの変化や生活の変化が起きたことによって引き起こされた一般的なうつ病です。
カウンセラーの立場から伝えたいことは、産後うつは女性しか感じることのできない苦しさやつらさを表現するものであってほしいということです。
わざわざ男性が女性の特有さを非常に強く含んだ「産後うつ」という言葉を使う必要性があるとは思えません。
女性に対する産後うつへの気づかいやサポートは、自分もそうだという共感や取り入れではなく、寄り添いや思いやりであってほしいと願います。
神奈川県生まれ。心理カウンセラー・キャリアコンサルトの有資格者。うつ病 / パニック障害 / 適応障害 / 依存症 / などの精神疾患から仕事や日常的な悩みなどを幅広くカウンセリング活動を行う。社会問題から心理学関連、カウンセラー活動記録、研修・教育、など人や仕事に関わるジャンルでライティングを行う。趣味は、アニメ鑑賞、競馬、散歩。採用コンサルタント、就業ケアマネージャーとしても活動。