男性の育休 国家公務員だけが段違いの取得率

男性の育休 国家公務員だけが段違いの取得率

国家公務員は99%、一方で地方公務員8.0%、サラリーマン12.56%の育休格差


<国家公務員の男性育休取得率>

令和3年8月27日付けで、内閣官房内閣人事局は令和2年度第1四半期に生まれた子供に対して、男性国家公務員の育休取得率99%と発表しました。

取得の内訳として、平均の取得日数は目標30日のところ50日と大きく上回り、取得者のうち88.8%が1ヵ月以上取得したということです。

<地方公務員の男性育休取得率>

令和3年1月25日に総務省が発表した、「地方公務員における働き方改革に係る状況」によれば、
平成30年度の教員および消防・警察職員を含む地方公共団体に勤務する男性職員の育休取得率は8.0%でした。

なお、令和元年以降の育休取得率は未発表です。

<一般企業勤務の男性育休取得率>

厚生労働省は、令和3年7月30日付けの「雇用均等基本調査」内で、昨年10月に全国の6200の事業所を対象に行った調査結果として、
回答数が半数強ではありますが、一般企業勤務の男性育休取得率を12.65%と発表しています。

そして、この前年度は 7.48%だったので5ポイント以上増加し、実に前年比約170%という脅威的な上昇率になっています。


上記で注意したいのは、国家公務員と一般企業のデータは昨年2020年のものであり、地方公務員は2018年のデータとなっていることです。

2020年はコロナ禍がはじまり、商業・工業などの経済活動の停止や鈍化が起きたことによって、直前までの労働環境と大きく状況が異なりました。

サービス業の停止や店舗の営業時間の短縮、サービス利用者が著しく減ったことはもはや説明さえ不要だと思います。

そういった状況下で、一般企業での育休取得率が飛躍的に上がる要因として、社会状況の変化が背景にあることも考慮されるべきでしょう。


産業カウンセラーとして、企業や個人のカウンセリングに携わる私から見ると、テレワークや業務縮小を行う企業が多く、従業員がこれまでのようにいなくても成立してしまうほどの経済活動を考慮すると、

育休取得率が増加するのは至極当然であり、これを手放しで成果として認識することはできません。

しかし、男性の育休という制度を再周知し、これまでの取得率の低さを認識する機会が増えたという面では一定の成果とも考えられるでしょう。


今年発表された情報を分かりやすく並べてみると、


■男性の育休取得率

・国家公務員…99.0%(2020年)

・地方公務員…8.0%(2018年)

・一般企業 …12.56%(2020年)


コロナ禍であるということを加味する以前に、国家公務員以外の男性の取得率が非常に低いですね。


厚生労働省から一般企業の男性が育休を取らなかった、または取れなかった理由がいくつか上がっているのでご紹介します。

<一般企業に勤める男性が育児休業を取得できないと感じる理由>

・職場に理解がない

・家計が心配

・今後の人事評価に響きそう

・復職後の役職が下がりそう

・復職後の給与が下がりそう

・自分の代わりがいない

・仕事の振り分けができない


 などの理由が挙げられているようです。

皆様どう感じるでしょうか。

私は自分の経験から照らし合わせても、想像通りという結果です。


中小企業が中心の日本において、職場に理解がないというのは、企業の努力不足や国の周知活動が行き届いていないのかもしれませんね。

今後の人事評価が気になっていたり、復職後の役職ということに関しては、ライバルが多いような環境、いわゆる出世レースが厳しい会社ではそう思って当然です。

従業員として今まで頑張ってきたことが水の泡、または自分がいない間にライバルが先に進んでしまう、などと思ってしまうことも納得がいきます。

しかし、育休を取る人間の評価を会社側が本当に下げるのであれば、いかに会社に時間を費やしているのかというような評価基準があるように考えてしまいます。


だとすれば、終身雇用を基盤にした昭和的な考えですし、このようなことが「職場に理解がない」ということにつながっているのではと考えられます。


他にも、少ない人数でどうにか利益を出しているような企業では、自分の代わりがいない、仕事が振り分けられないというのも頷けます。

<男性の育児休暇率の比較>

地方公務員 < 一般企業 < 国家公務員

ですが、数値の差を見れば実態として、

地方公務員 = 一般企業 <<<< 国家公務員

という事実。

育休を取れなかった、または取らなかった理由や、勤務体制を加味すると、育休という制度がまずいのではなく、とりたくてもとれない企業体制や組織体制が問題だと感じます。

一般企業の男性にしても地方公務員にしても、1人あたりに対する労働負担が大きい、同時に1人あたりの労働成果が高いとも言えるでしょう。

もちろん個人的な能力や職務職域など考慮すべき点は多く存在しますので、一概には言えません。

さらに本年度は、育休法の改正が行われています。


■厚生労働省ホームページより原文転載

令和3年6月に育児・介護休業法が改正されました。
1 男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設 【育児・介護休業法】
 子の出生後8週間以内に4週間まで取得することができる柔軟な育児休業の枠組みを創設する。
 ①休業の申出期限については、原則休業の2週間前までとする。 ※現行の育児休業(1か月前)よりも短縮
 ②分割して取得できる回数は、2回とする。
 ③労使協定を締結している場合に、労働者と事業主の個別合意により、事前に調整した上で休業中に就業することを可能とする。

厚生労働省発表文書(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000788616.pdf

さいごに、パパ休暇をご紹介します。


■厚生労働省ホームページより原文転載

育児・介護休業法には、両親が協力して育児休業を取得できるように、
1 パパ休暇(出産後8週間以内に取得した場合の再取得の特例)
2 パパ・ママ育休プラス
等の特例があります。

これらの制度をうまく組み合わせることで、両親ともに、仕事と家庭の両立を実現することができます。

厚生労働省発表文書https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000169713.pdf

「育休を分割して取りましょう」という施策を追加したようです。

厚生労働省は一般企業や地方公務員の育休が取りづらい実態を調査し理解しているはずですが、

分割して育休を取ることと自らが発表している育休を取りづらい理由の解消とはさほどつながらないと思うのは私だけでしょうか。

いかに育休の制度が “育休を取る者” にとって有益なものになっていっても、企業側に人事評価のアップデートや企業体制の余裕がなければ育休そのものが実現しません。

産業カウンセラーとしてさまざまな企業の人事、従業員とやり取りをする私個人としては、現実と理想のギャップを埋めるために必要なサポートが生まれないことを憂慮してしまいます。


国や自治体には、育休を取れない従業員だけではなく、与えることができない企業や組織に対する支援・サポートや改革を手助けする施策を期待しています。

この記事のライター

神奈川県生まれ。心理カウンセラー・キャリアコンサルトの有資格者。うつ病 / パニック障害 / 適応障害 / 依存症 / などの精神疾患から仕事や日常的な悩みなどを幅広くカウンセリング活動を行う。社会問題から心理学関連、カウンセラー活動記録、研修・教育、など人や仕事に関わるジャンルでライティングを行う。趣味は、アニメ鑑賞、競馬、散歩。採用コンサルタント、就業ケアマネージャーとしても活動。

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