精神疾患に対する医療行為の落とし穴

精神疾患に対する医療行為の落とし穴

根本的な問題の解決を進めなければ心の安寧は訪れない


カウンセラーとして活動する私が多く接触するのは“元”精神疾患患者さんです。

うつ病、適応障害、パニック障害、強迫性障害、心身症、PTSD…さまざまな心の病を経験された方が多くいらっしゃいます。

なかでも、うつ病と適応障害の経験者は非常に多いと言えます。


そして、相談者のほとんどは“元”患者であると申告してくださいます。

カウンセリングを進めていくと、大半の方が精神科や心療内科で通院をしていた経験があり、再発または以前のものが治っていないということが分かります。


もともと心の病気はすべて治りづらいと言われていたり、そもそも治らないと言われているものもあります。

多くの精神疾患は大なり小なり心の傷や疲れ、不安感などとうまく付き合いながら過ごす必要があるのです。


私の元へ来た“元”精神疾患の患者さんに対して、必ずと言ってもいいほど説明をすることがあります。


それは医療とカウンセリングの違いです。


多くの相談者は「病院に行っていたのにまたなってしまった」「病院に通ってても治らなかったのは自分の心が弱いからだ」「病院で治らないんだから心の病気からは逃れられないんだ」というような趣旨の言葉を次々に口にします。


もともと悩んでいる種に加えて、そういった自身に対する失望や悩みがさらに心の不安定を加速させてしまっていることが多いのです。


<精神疾患への医療行為とカウンセリングの違いについて>

精神科や心療内科では、“医療行為”を行います。

医療行為では、病気かどうかの診断と、その症状に対しての緩和や除去を目的とした投薬が主な対応です。

当然ながら、治療中のケアや経過観察、治療後のリハビリテーションも医師の務めとなります。


対してカウンセリングはというと、医療行為ではありませんので病症の診断も投薬なども一切できません。

カウンセリング行為の目的は、その根源の理解と自己解決の補助、時には助言などが主です。


・医療行為 = 病気の診断と症状を治す
・カウンセリング = 病気の根源の理解と自己解決力の促進

(※医療行為でも、カウンセリングを同時に行ってワンストップで患者さんを快方へ導く場所もあります。)


<医療行為の落とし穴>

医療行為で病状が改善したと思っても、現実社会や人間関係などが変わったわけではないので、同じような問題にぶつかってしまうことがあります。

病状が改善したからと言って、問題が解決したわけでも解決する力を手に入れたわけでもないので、再発するのは至って自然なことです。


それゆえに“元”精神疾患の患者さんには、医療行為で治らないことは「あなたが悪いのではなく、自然なことなんです。」と話して、

自分の状況やこれまでのご自身の行動の流れを理解してもらう必要があります。


実は、医師もこのような説明をしてカウンセリングを促したり、しっかりと通院してくださいと話している方はいます。

ですが現実として、病気だったつらい気持ちが楽になると「もう大丈夫そう」と感じてしまって病院に行かなくなる方が多いのも事実です。


<医療行為とカウンセリングがワンストップになっていない実情>

カウンセラーと病院やクリニックの提携は珍しいことではありません。

カウンセラーからすると、明らかに言葉や感情だけで解決できない問題は、医療機関の力が絶対的に必要になります。

医師から見ても投薬だけでは解決できない場合、外部カウンセラーへの打診をすることがあります。


ですが一方で、医療とカウンセリングをワンストップで行えるような精神科や心療内科の医療施設は多くありません。


やはり上記の違いで述べたように、医療とカウンセリングは目的が異なりますので、精神科や心療内科に行ったからといって、

カウンセリングやリラックス法など、必要なことすべてをまかなえないというのは当然と言えば当然なのです。


<その心の病、再発しているのではなく何も変わってなかっただけ>

どんな病も「根本的な問題の解決を進めなければ心の安寧は訪れない」と言えます。

例えば、
風邪をひきやすい人が扁桃炎持ちだった場合、その時の風邪の症状を薬で治しても、扁桃炎をどうにかしないと風邪をひきやすいことになんら変わりはありません。


“なぜそうなったのか?”その理由が明確にならない限り、完治も再発もないのです。

投薬で感情をコントロールして苦しさやつらさから一時的に逃れているだけでは、根本は何も変わりません。


しかし、なかには投薬によって心が楽になることで、根本的な問題を問題と感じなくなる人も少なからず存在します。

心の病は目に見えず数値にも表われないので、根本的な原因を認識することが難しいです。例えそれが医師であっても、時間の短い診断という医療行為のなかでその原因を見つけるとなると非常に困難です。

カウンセラーはその根本的な原因の特定と、それをご自身で解決できるだけの力を手に入れるサポートをすることを専門として活動しています。

<さいごに>

一般的な医療行為で十分に快方に向かう患者さんも大勢いらっしゃいます。

この記事で伝えたいことは、医療行為を否定したり軽く考えるということではありません。

病気のときの苦しさと、治療中のケア、リハビリ、その病気の根源、自分の感情の理解、自己解決力という目には見えづらいことを理解するには、それぞれ分野やアプローチ方法が異なってきます。


だからこそ、通院している人も、通院が終わった人も、なぜ自分の心がここまで苦しんだのかを見つけてほしいんです。

そうでなければ、きっとまた同じ様な状況が訪れたときに苦しんでしまうから。


だからこそ、医療でできることとできないこと、カウンセリングでできることとできないことがあると理解したうえで、あなた自身、またはあなたの身近な人の心の病と向き合ってほしいと思います。


FABO news.の運営するサービスにもカウンセリングサービスがあり、有料相談、無料相談、どちらもございます。興味があればいつでもご相談ください。

この記事のライター

神奈川県生まれ。心理カウンセラー・キャリアコンサルトの有資格者。うつ病 / パニック障害 / 適応障害 / 依存症 / などの精神疾患から仕事や日常的な悩みなどを幅広くカウンセリング活動を行う。社会問題から心理学関連、カウンセラー活動記録、研修・教育、など人や仕事に関わるジャンルでライティングを行う。趣味は、アニメ鑑賞、競馬、散歩。採用コンサルタント、就業ケアマネージャーとしても活動。

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