「お客様は神様」というワード。
誰もが1度は耳にしたことがあると思いますが、この言葉がどのように生まれたかを皆さんはご存じでしょうか。
この言葉は、昭和歌謡界を代表する演歌歌手、三波春夫さんが生みの親だとされており、昭和36年ごろに誕生しました。
三波さんはインタビューにてこの言葉の意味を問われ、以下のように答えています。
『歌う時に私は、あたかも神前で祈るときのように、雑念を払ってまっさらな、
澄み切った心にならなければ完璧な藝をお見せすることはできないと思っております。
ですから、お客様を神様とみて、歌を唄うのです。また、演者にとってお客様を歓ばせるということは絶対条件です。
ですからお客様は絶対者、神様なのです』
出典:三波春夫オフィシャルサイト
お客様=消費者のイメージが強く根付いていますが、本来は“聴衆を神様とみて歌を唄う”という三波さんの心構えを表現したもののようです。
日常生活において、飲食店やコンビニエンスストア、スーパー、量販店などさまざまな場所で、「お客様は神様だ」と言わんばかりに大声をあげている人をよく見かけます。
明らかにサービス提供側に非があるのであれば、怒るのも致し方ないかとは思いますが、大声でお店の非を訴えているかと思いきや、理不尽なクレームを付けているところを見ると唖然とします。
また、自分もサービス利用中の立場として居心地が悪く、不快に感じてしまいます。
コロナ渦のマスク品薄状態で店員さんが悲鳴をあげていたのもいい例です。
単純に在庫があるかないかを聞くだけの人もいれば、「在庫があるはずだ、出せ!」と大声をあげる人など、とさまざまいたようです。
自分の思い通りにならなければ、途端に怒り狂ってしまう消費者たち。
「普通に考えて…」「常識的に…」という枕言葉を使って攻撃している場面をよく見かけますが、常識から逸脱しているのは果たしてどちらでしょうか。
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以下、シチュエーション毎に実際のクレームを挙げてみました。
■返品不可を了承して購入した商品
「開封はしてるけど使ってないから返品させてくれてもいいでしょ!」
消費者にとってはこのくらいいいでしょと思っても、もう売り場に出すことのできない商品を返されたうえに、お金も全額返金するとなるとお店側は損でしかないですよね。
■遅延した電車
「なんで電車がこないんだ!何時にくるんだ、俺の時間をなんだと思っているんだ!」
電車の遅延は車掌さんや駅員さんのせいではないですよね。
安全確保や思わぬ事故の対応をしてくれているこの方たちになんの非があるというのでしょうか。
■混雑した飲食店
「なんで2回も3回も呼ばないと来れないんだ?」
見ての通り店内は混みあっています。あなた以外にもたくさんお客様がいらっしゃるんです!
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筆者もサービス業をいくつか経験してきましたが、理不尽なクレームについては、
「自分だけは特別にどうにかしてもらえる」
「私の指摘をありがたいと思いなさい」
と言われているように感じることが多かったです。
あらゆる企業はそれぞれルールを定めて営業しています。
それにのっとって働いている人たちに対して、個人の感情とワガママで声を荒げている方々は、“視点を変えて物事を見る”という想像力を働かせてほしいと思います。
お客様は神様ではありません。
同じ対等な人間です。
誤った言葉の解釈を盾にすることなく、“意見”と“ワガママ”の切り分けができる大人がひとりでも増えてほしいと思います。
1996年、新潟県生まれ。
趣味は献血、フォロワー1人のインスタアカウント有。
日本一の抹茶アイスを作るため研究中。