「感動ポルノ(Inspiration Porn)」という言葉を聞いたことはありますか?
2012年に障がい者の人権アクティヴィストであるステラ・ヤングが、オーストラリア放送協会(ABC)のウェブマガジン『Ramp Up』で初めて用いた言葉で、意図を持った感動場面で感情を煽ることを指します。
この言葉を作ったステラ・ヤングは、生まれながらの骨形成不全という障がいを持ち、人生の大半を車椅子で過ごしました。
彼女は2014年に『I'm not your inspiration(私はあなた方を感化する者ではない)』と題して講演を行い、そのなかで世の中の障がい者に対する接し方を「感動ポルノ」と形容し、下記のように述べました。
「障がいは悪であり、そのような悪に屈せず果敢に物事に取り組む障がい者は立派であるという観点は、健常者が自分たちのために障がい者を利用しているにすぎない。すなわちポルノに等しい。」
ポルノ自体は性的な興奮を掻き立てるものに使われる言葉ですが、彼女はあえてこの言葉を使い、世の中の風潮を批判しました。
日本では毎年8月最後の土日に『24時間テレビ』が放送されていますが、感動ポルノが横行しているのではないかという指摘も存在しています。
過去には、
・カメラマンが点字ブロックのうえに撮影機材を置いていた ・チャリティー番組にもかかわらず、番組出演する芸能人に高額のギャラが支払われている ・目に見て分かりやすい身体障がい者ばかりがクローズアップされている |
といった声が見受けられました。
こうした数々の情報が、視聴する人々に疑念をいただかせる要因にもなっていると思います。
24時間テレビが感動ポルノと批判されている件については、発案者もご存じだそうですが、これに対し「まず問題を知ってもらう必要がある」と発言しています。
私たちが認知していない病気と共に生きる人々や、不慮の事故や災害でこれまでの生活が一変したなか困難を乗り越えている人々…
確かに、“知る”という機会を与えてくれる番組であるとは思いますし、良い側面ももちろん存在していると思います。
実際に障がいをもつ方々がどのように捉えるのか、感じ方は人それぞれですし、
障がいの有無にかかわらず、自分にはない経験をする人々を素直にすごいと思う気持ちをわざわざ否定する必要もないのかもしれません。
ただ、そういった「感動ポルノ」という見方が存在するということも知っておいてほしい、そう思いこの記事を書きました。
あなたはどう考えますか?