メンタリストDaiGo氏の炎上理由とは 優生思想をわかりやすく解説

メンタリストDaiGo氏の炎上理由とは 優生思想をわかりやすく解説

炎上をきっかけに「優生思想」を初めて耳にした方も多いのではないでしょうか


2021年8月メンタリストDaiGo氏の発言が炎上しました。
その発言が“優生思想”だということが根本的な炎上の元だと考えられます。

そこで今回は優生思想とは何かを、できる限りわかりやすくご紹介します。

私はカウンセラーですが、その勉強の一環で優生思想の学術も簡単ですが学びました。

優生思想を説明しようとするとき、どうしてもイギリスの歴史を理解する必要があります。

1900年代初頭、イギリスで生まれた優生思想は、差別や選別を行うものではなく、“より適切な人間を生み出すためには”という意味合いで学術の1つとして生まれました。

優生思想の目的はざっくりと大きく2つです。

・イギリス(国)にとってより適切(高知能)な人の出産の増加
・イギリス(国)にとって不適切な人(障がい者など)の出産の抑制

上記の達成が求められました。
「不適切な人の出生の抑制」この部分を見ると、優生思想の危うさが伺えますね。

これはつまり、適切な人間と不適切な人間に2分化されていて、不適切な人間が生まれてくることは望まれていないと伺えます。

この、いわば命の選別とも取れる考え方が優生思想として存在しています。

この後、ナチス・ドイツによる、プロバガンダが最も有名な優生思想として歴史に名を残します。

ナチス・ドイツは、
「知的・身体の障がい者や精神疾患に陥ったものなどは労働できない人間であって、それらの人の生活は健常者のみなさんが働いた税金でまかなわれています。」
というような趣旨の発表を行いました。

そして、史上最悪の大量虐殺が行われたのです。

イギリスは優生思想である不適切な人間の抑制を実行し、ナチス・ドイツは不適切な人間の排除を実行したわけです。

こういった歴史背景を元に現代の優生思想を理解しようとすると、ある一定の答えが見えてきます。

優生思想でいう不適切な人間とは、知能が低く、著しく経済力がない一般市民、または遺伝的先天性の障がいを持っていたり、後天的に精神・身体に障がいを負ってしまった者であり、他者の援助(生活保護や国の支援)がなければ生きていけないような人間となります。

優生思想が非常に恐ろしい思想だということがご理解いただけますでしょうか。

これを現代の日本社会に照らし合わせると、ホームレスや生活保護、知的障がい者や身体または精神障がい者などの俗にいう社会的弱者(この弱者とい言い方は否定されることもありますが)があたります。

この方たちは社会に必要ないので死んだ方よい、と言われているようなものなんです。

端的に言えば弱肉強食の世界ですね。

まさにこれは、メンタリストDaiGo氏が発言した内容と近しい思想だと言えます。
以下に、メンタリストDaiGo氏の発言を一部抜粋しました。


「僕は生活保護の人たちにね、あの、なんだろう、お金を払うために税金を納めてるんじゃないからね。」

「生活保護の人たちに食わせる金があるんだったら、あの、猫を救ってほしいと僕は思うんで。

生活保護の人生きてても僕べつに得しないけどさ、あの、猫はさ、生きてれば僕得なんで。

人間の命と猫の命は人間の命の方が重いなんて僕全く思ってないからね。

自分にとって必要もない命は僕軽いんで。

僕にとって軽いんで。そうそうそう、だからべつにホームレスの命はどうでもいい。

てか、どちらかっていうと、みんな思わない?
どちらかっていうといない方がよくない?

ホームレスって。言っちゃ悪いけど。本当に言っちゃ悪いこと言いますけど、いない方が良くない?

いない方がだってさ、みんな確かに命は大事って思ってるよ。

人権もあるから。いちおう形上大事にするよ。でもいない方がよくない?

うん。正直。邪魔だしさ、プラスになんないしさ、臭いしさ。

ねえ。治安悪くなるしさ、いない方がいいじゃん。猫はでもかわいいじゃん?

うん。って思うけどね、僕はね。

うん。もともと人間はね。自分たちの群れにそぐわない社会にそぐわない、群れ全体の利益にそぐなわい人間を処刑して生きてきてるんですよ。

犯罪者を殺すのと同じですよ。犯罪者が社会の中にいると問題だし、みんなに害があるでしょ?

だから殺すんですよ。はい。同じですよ。」

YouTubeチャンネル メンタリスト DaiGo の動画より




この発言、ナチス・ドイツのプロバガンダと全く同じことを言っているんです。
特に処刑の話を持ち出した所あたりが決定的であると思います。

「なぜ生活保護者、ホームレスのために自分の払った税金が使われているのか。ならいっそのこと死んでもらった方が良い。何なら害があるんだから犯罪者を殺すのと同じである。」

要約するとこのように捉えられます。これだと優生思想論者であると言われても仕方ありません。

命の価値が平等であるというのは至極真っ当ではあります。

ですが、なぜ真っ当であるのかという疑問を持つ人も少なからずいると思います。

それもそのはずで、ナチス・ドイツが第2次世界大戦で破れ、優生思想はなくなるかと思いきや、世界中で優生思想は受け継がれたのです。


日本でもそうです。

日本では、1940年に国民優生法が成立しましたがほとんど機能せず、1948年に優生保護法」として再生しました。

この優生保護法の第1条は、「優生上の見地から不良な子孫の出生を予防するとともに、母体の生命健康を保護することを目的とする」とされています。

その後、1996年には母体保護法に名前を変えました。

この母体保護法では、「優生上の見地」(=優生思想の学術から)という言葉が削除され、母体の生命健康を保護することを目的にすることで、優生手術という名前から不妊手術に名前が変わりました。この法律の目的は中絶の合法化です。

つまり、名前と目的は代わっているが行動は変わっていないことになります。


出産の経験者や身内に出産をした方がいらっしゃれば、出生前診断をご存知かと思います。

これは、出生前に身体障がい者または知的障がい者の可能性を見極めることができる診断です。

当然、その後は希望によって中絶することも可能です。
見方を変えれば、イギリスの優生思想ですよね。


私個人的としては、中絶については肯定派です。

社会的経済力が乏しい、障がいがある可能性が高い、など中絶を選ぶ過程にはさまざまな理由があると思いますが、出産する親が育てられる生活基盤や気持ちがなければ成立しないと思うからです。

でも…この考え方、命を選別していると感じる側面もあります。

メンタリスト DaiGo氏を擁護するつもりは全くございませんが、
今回分かったこととしては、優生思想をとがめる国民が多いのに反して、優生思想に近い概念や法律は存在するという矛盾が生じていることです。

人の命はみんな平等であり、権利も平等、生きていることに優劣はない。

確かにその通りだと思います。

しかし、どうしてもそんな奇麗ごとじゃ納められない矛盾も実際にあります。


優生理論や弱肉強食の理論を否定したい気持ちは私も同じです。

それでも、“生命”という枠組みの話では、人間だから食用家畜の命は奪っても問題ないのか?人を襲った野生の動物の命は奪ってもいいのか?などいろいろなものに派生していきます。

これらを倫理的かつ理論的に説明することは非常に難しいと感じています。


私はカウンセラーとして“生き物の命”についての根本的な議論を、正義感や感情だけで気軽にすることはできません。

特に優生思想については非常に根が深く、社会や人間の生活する仕組み、人間の生存システムなどの話が絡み合います。

この話はまた機会があるときに。


さいごに、この記事を読んでくれた皆さまが、“生命”について“人間の作ったルール”について、少しでも何かを考えるきっかけになってくれると嬉しいです。


この記事のライター

神奈川県生まれ。心理カウンセラー・キャリアコンサルトの有資格者。うつ病 / パニック障害 / 適応障害 / 依存症 / などの精神疾患から仕事や日常的な悩みなどを幅広くカウンセリング活動を行う。社会問題から心理学関連、カウンセラー活動記録、研修・教育、など人や仕事に関わるジャンルでライティングを行う。趣味は、アニメ鑑賞、競馬、散歩。採用コンサルタント、就業ケアマネージャーとしても活動。

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