<仕事に役立つ心理学>商談・交渉に使える 初頭効果と親近効果を使った話し方

<仕事に役立つ心理学>商談・交渉に使える 初頭効果と親近効果を使った話し方

印象形成に役立つスキルをお教えします!


皆さんは人とコミュニケーションをとるとき、どのようなことを考えますか?

まず、相手に物事を伝えるために言語化が必要ですよね。

人は事象や出来事から何を考えたか、どんな感情になったかを言葉に変えて、できるだけ相手に伝わるように、自分のキャラクターや立ち位置などを考慮して会話をすることができます。

これを“ソーシャルスキル”と言ったりします。

今回は、相手に話をする時の印象について、“初頭効果”と“親近効果”という2つの心理効果を使ったスキルをご紹介します。

初頭効果と親近効果も、相手が感じる印象を利用した心理効果スキルです。

初頭効果とは

相手へ何かを説明する際に、全く同じ内容を伝えているにも関わらず、初めに伝えた内容から印象が形成されていくことを言います。

例えば、何かのボードゲームの商品紹介をする場合、

かんたん/みんなで遊べる/安い/対象年齢3歳~


という要素を伝えるとします。

この際に、
「このボードゲームは、かんたんにみんなで遊べます。安くて、対象年齢は3歳からです。」
と紹介すると、「かんたんで」「みんなで遊べる」という印象が強く伝わります。

逆に、
「安くて、対象年齢は3歳からです。かんたんにみんなで遊べます。」
と紹介すると、「安い」「3歳から大丈夫」という印象を強く与えることになります。

こういった効果があることを、社会心理学者のソロモン・アッシュは初頭効果と言いました。


親近効果とは

初頭効果と全く逆の意味です。

最後に伝えた内容が、印象に最も大きい影響を与えるというものです。

上記と同じように
「このボードゲームは、かんたんにみんなで遊べます。安くて、対象年齢3歳からです。」
このように紹介すると、「安い」「3歳から大丈夫」という印象を強く与えることになるという効果です。

こちらは認知心理学者のノーマン・H・アンダーソンが親近効果として提唱しました。

全く逆の概念なのですが、これにはある条件によってどちらの効果が発揮されるのかが示されているのです。

その条件とは、
・初頭効果 = その話に関心がない人
・親近効果 = その話に関心がある人
ということです。

商談の場で初頭効果を使う場合の具体例を上げたいと思います。


パターン①

背景

テレアポで商談の場を設けました。当然、相手は初めて会う人です。

あまり興味はなさそうでしたが、
「その手の商品は高いから契約は難しいと思うけど、話は聞いてもいいよ」
と言われました。

具体的な商材説明の仕方

挨拶を済ませた後、
「早速ですが、商材の説明をさせていただきますね。この商品は業界内でもとても安価に販売されています。皆さん最初は高額だと思って話すら聞いていただけないのですが、弊社の商品の話を聞いていただいた方は、金額の話はあまり問題になっていません。機能としては~…」

解説

あまり興味がないことが分かっている場合は、初頭効果が有効です。

最初の方に相手に印象付けさせたい内容を伝えることで、相手に与える印象を操作します。

今回はテレアポの際に「その手の商品は高いから…」と言っているので、料金面での問題をクリアしないと、商材そのものがどんなに魅力的なものでも相手が話を聞き入れる姿勢ではなくなってしまいます。

このような場合は、初頭効果の印象操作を用いて、相手に話を聞いても良いと思わせる姿勢を作ることができます。

パターン②

背景

お客様から問い合わせを受けて商談の場を設けました。初めて会う人です。

自社の中で問題になっていることを解決したいと思っているようで、問い合わせをいただきました。

その時、
「問題を早期に解決できるものを探しているので、話が聞きたい。」
と言っていました。

具体的な商材説明の仕方

あいさつを済ませた後、
「早速ですが、商材の説明をさせていただきますね。まず、この商品でできることや機能をご紹介させていただきます。 ―中略― なので、この商品では今回お問い合わせいただいたときに教えていただいた、問題の早期解決にすぐ着手することができます。まず想定される利用方法としては…」

解説

相手が興味を持っていること、使命感がある場合は、本当に伝えるべきことは最後に伝える方法を取ります。

この商談の事例の場合、「問題の早期解決ができる」という事実を強く印象付けすることが重要ですので、親近効果を使う方が好ましいと考えます。




では、営業をしている方にお聞きしたいのですが、商談の相手がそこまで興味を持っていなかったり、相手企業から問い合わせが入っているにも関わらず「そこまでこの話に興味がないかもな…」と思うこと、多くありませんか?

ほとんどの営業活動において、営業する側が優位になっている場面はとても少ないと思います。

そのため、初頭効果(その話に関心がない人の場合)を使う場面が圧倒的に多いと思います。

その際のアドバイスとして、優位性を保てる印象を与える方法をお伝えします。
以下のような流れを意識してみてください。

1. 初頭効果を使って、冒頭で相手がほしい情報を伝えて「これなら話を聞いても良いかも」という印象を付けます。

その後の商材説明の際に、ヒアリングを行いながら問題や課題を明確化させます。
この時点で、“その話に関心がない人”から“その話に関心がある人”に変わります。

2. 商談の最後に向かって親近効果を意識しながら話を進めます。

(核心の話はしないでください。)

3. 1番最後に核心の話をします。


こうすることで、初頭効果の“関心”を持たせるという印象効果と、親近効果の“期待の実現”ができるという印象効果を、それぞれ与えることができます。
(初めから興味関心が強い場合は、初頭効果を使う必要はありません。)

いかがでしたでしょうか。

営業に限らず、誰かとコミュニケーションを取るときに相手がどういう心理状況なのか、どういう話なら面白い・楽しいと思ってもらえるのかは非常に重要になります。

【何を話すか】は当然重要です。
でも考え抜いた内容を正しく相手にしっかりと伝えるためには【どう話すか】も重要になります。

機会があれば、初頭効果・親近効果という印象効果を知って、意識して話してみくださいね。


この記事のライター

神奈川県生まれ。心理カウンセラー・キャリアコンサルトの有資格者。うつ病 / パニック障害 / 適応障害 / 依存症 / などの精神疾患から仕事や日常的な悩みなどを幅広くカウンセリング活動を行う。社会問題から心理学関連、カウンセラー活動記録、研修・教育、など人や仕事に関わるジャンルでライティングを行う。趣味は、アニメ鑑賞、競馬、散歩。採用コンサルタント、就業ケアマネージャーとしても活動。

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