人間は、その場で見たものを記憶できる量に限界があります。
そういった人の記憶領域について、“チャンク”という概念が心理学上では存在します。
心理学者のジョージ・A・ミラー(以下ミラーと表記する)は、人間が一時的に記憶できる情報量について、7つが限度であるとしたのです。
(実際には、人によって誤差があるので7±2で提言)
この数字のことをマジカルナンバー7と言ったりもします。
チャンクとは
情報を1つのかたまりにまとめることを指します。例えば、
1234567
上記の数字を覚えようとしたとき、1から7までの数字7つと理解しませんか?
これが1チャンクという考え方です。
逆に、
1,2,3,4,5,6,7
と数字をそれぞれ個別に理解した場合、7チャンクということになります。
次は文字で表します。
artoldverymany
上記の14文字をそのまま覚えようとすると、すごく難しく感じると思います。
これはミラーがいう7文字±2を大きく上回っていますよね。
ではこうするとどうでしょうか。
(art)(old)(very)(many)
それぞれを単語にまとめると4つのチャンクになります。
14個の文字の記憶という問題から、4つの単語(チャンク)の記憶に置き換わります。
マジカルナンバー7を信じると、あと3つほどの単語であれば記憶できるはずなので、文字数でいうと30文字近くを1度に記憶することができるのです。
これがチャンクの考え方となります。
当たり前の概念ではあるのですが、人は知らないこと、わからないことが目の前に現われると、どのように処理を行ったらいいかわからなくなります。
例えば、どこで区切るべきなのか、何を1つとして捉えるべきなのか、わからないからすべてを個別に理解しようとして、記憶容量をたくさん使ってしまうのです。
ではこのチャンクという概念を日常の中で応用してみましょう。
人に何かを伝えるとき
人は1度に7つのことまでしか覚えることができません。
当然7つのことを記憶をさせてしまえば、それらを吟味する容量がなくなってしまいます。
では、伝える時に“7つの要素が入った1つの話、または2つの話をする”ということができれば、相手は容易に物事を理解し、それらを吟味し議論をすることができますよね。
よく「完結に説明しなさい」とか「端的に説明してください」といったことを言われたり、言われている人をみませんか?
これは「1~2個ほどのチャンクにまとめて説明をしなさい」と言われているようなものです。
難しい言葉を並べたり、説明を省きなさいといった意味ではありません。
何から何をチャンクにまとめるのかを考えて話すということになります。
とはいえ、言葉や言い回し、単語のレパートリーは多いに越したことはありません。
カウンセラーとして、コミュニケーション力や説明力がほしいという相談を受けることがあります。そんな時は、チャンクを意識的に使ってみることをおすすめしています。
参考として、チャンクアップとチャンクダウンについて紹介します。
チャンクアップとは
チャンクの応用で“ものごとを俯瞰(ふかん)的に1つのものとしてみる”ことを言います。
情報が多くなりすぎて、チャンクとしてもたくさんの集合体になってしまった時などに有効です。
例えば、自分が企業で働く中で10個の課題(チャンク)が発生しているとき。
自分を主体にするのではなく“会社の中で10個の課題を持っている自分”という、1つのチャンクとして物事を考えることで、また違った意見や視点が生まれます。
チャンクダウンとは
1つの問題が起きたときなどに、それを1つの事象でなく細かいチャンクに刻んでいくようなことです。
例えば、会社で働く中で目標達成ができずに、評価されない自分に失望しているとします。
この時、(目標とは)(達成できない理由とは)(求めている評価とは)(失望とは)といったように物事を細分化することを言います。
チャンクアップとは逆ですが、早期問題解決やさまざまな処理を行ううえではとても有効な考え方です。
さいごに
チャンクを理解し、適宜使えるようになるということは、さまざまな状況下でも常に事実、事象、感情、問題や課題、あるべき姿などの整理がつきやすい状態になるということです。
最近頭の中が散らかっているな…そんなときはチャンクを使ってみてはいかがでしょうか。
神奈川県生まれ。心理カウンセラー・キャリアコンサルトの有資格者。うつ病 / パニック障害 / 適応障害 / 依存症 / などの精神疾患から仕事や日常的な悩みなどを幅広くカウンセリング活動を行う。社会問題から心理学関連、カウンセラー活動記録、研修・教育、など人や仕事に関わるジャンルでライティングを行う。趣味は、アニメ鑑賞、競馬、散歩。採用コンサルタント、就業ケアマネージャーとしても活動。